Hill’s Side Houseの原点

2015年4月Hill’s Side House(以下HSH)はデビューしたがプロジェクトは1年前から始動していた。最初から帆布を使ったバッグブランドにしようと思っていたわけではなく、当初は革や麻・藍染めなど色々な素材を探していた。でもなんとなく天然の素材が使いたいという強い想いだけはあった。その頃、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維のバッグが蔓延していたという事もあるが、自分の中でそこは譲れない核の様な部分でもあった。そんな折タケヤリ帆布と出会った。

株式会社タケヤリは、繊維産業が盛んな地である岡山県倉敷に1,888年から現在まで続く老舗の機屋である。海の近いこの土地では塩害の影響で農耕には適さない土地だったという。そんな土地で唯一成長したのが綿花だ。創業者である武鑓石五郎と梅の二人は、工楽松右衛門が考案した帆布に着目し、その技術を取り入れ伝承してきた。今では国内帆布製造の7割以上を占める一大産業へと成長した。

そもそも帆布とはなんなのか。。。そのルーツは遠く、古代エジプトまで遡ることになるのでここでは割愛させてもらおう。しかし、一つ言えることは日本にこの技術が伝わるずっと以前から帆布は世界に存在していたということ。帆布は、無染の綿や麻の糸を撚り、平織りにした布の事。一目一目がしっかり詰まっていて丈夫で水漏れしない。さらに通気性に優れていることから船の帆や馬具として使われていた。帆布には10番単糸という太さの綿糸が使われる。それらの糸を何本の糸で撚るかで太さを変え、織ることで厚みの異なる帆布を織りあげる。

帆布は、多くの工程を踏んで一枚の布へと仕上がる。10番単糸を撚り合わせて一本の糸にする『撚糸』。それらの糸をさらに撚り合わせて一本の糸にする『合糸』その糸をビームと呼ばれる巨大なロールに巻き取る『整経』という作業。そして『製織』に入り織り上げる。最後に検査・畳を終えて出荷されるのだ。

製織には織機(しょっき)と呼ばれる機械を用いて一枚の布を織り上げる。その織機の中でも昔からその仕上がりと風合いを愛され続け絶対的存在感を出し続けているシャトル織機。緯糸を内蔵したシャトル(杼)を使い、糸を左右交互に打ち込んで製織する。主流である高速織機に比べると1日に数十メートルしか織り上げる事ができない。しかし、この『遅さ』が生地にふっくらした空気をまとったかのような自然なふくらみをもたらし温かみのある風合いに仕上げる事が可能となる。HSHが採用している生地もこのシャトル織機で織り上げられている。

HSHは帆布バッグを作り続けているしこれからも作り続ける。帆布に対して拘っている。。。という言葉は少し違うかもしれない。もし言葉で表現しないといけないとしたら『出会った』が一番しっくりくる。帆布と出会い深く知ることでその魅力に魅了されこの素材でモノを創りたいと強く想ったことでHSHは誕生した。

HSHとして大事にしていきたいのは『温もり』。綿花や革など自然なモノが与えてくれる温もりや紡いだり洗ったり色をつけたりなどの人の温もり。そんな温もりを一つ一つ大事に集めて足を運んでくれた人たちが温もりを感じて幸せな気分になってもらえる『丘の上にある家』それがHSHの原点だ。